
土浦協同病院は長年にわたって地域の救急医療の最前線に立ち、最も緊急性が高く最も重篤な患者さんの診療に当たってきました。救急患者さんの総数は年間約30,000人、救急応需件数はドクターヘリや防災ヘリ搬送を含めると年間約9,000件と県内で最多の受け入れ実績があります。当院は重症外傷/多発外傷および重篤な内因性緊急手術とそれに続く外科的集中治療については十分な診療体制と豊富な経験とを有しています。
近年の病院の機能分化に伴って、土浦協同病院は今後さらに急性期医療・重症患者診療へ特化した役割が求められています。そのような状況の中で、救急集中治療科・脳神経外科・整形外科・血管外科・放射線科などの急性期の外科診療(救急外来における蘇生・緊急止血手術・開頭手術・カテーテルによる血管内止血手術・四肢外傷に対する緊急手術・術後集中治療など)を担当する専門診療科が合同で2024年度より「外傷・Acute Care Surgeryセンター」を開設しました。
Acute Care Surgeryとは胸部や腹部などの体幹部外傷、内因性緊急疾患に対する緊急手術、術後の外科的集中治療を専門とする領域です。土浦協同病院では2022年4月から救急集中治療科がこのAcute Care Surgeryを担当しており、国内でもトップクラスの年間300件を超える緊急手術を実施しています。ここに重症頭部外傷・複雑な四肢外傷・大血管損傷などを担当する専門診療科が加わり、これら診療科が密に連携をとることによって各々の診療科の豊富な診療経験とリソースが一元化され、重症多発外傷や集学的治療を必要とする重症内因性緊急疾患の急性期診療に対して高度なチーム医療を提供するような体制を強化しました。
重症外傷やショックを呈しているような重症な内因性疾患においてはすでに身体に多大な侵襲が加わって重篤な状態となっており、そこにさらに治療のための手術侵襲が加わります。すでに重篤な状態に陥っている患者さんにおいてはこれらの侵襲の総和に耐えきれないことがあります。当センターではそのような場合には「ダメージコントロール」と呼ばれる治療戦略をとっています。これは初回手術侵襲をあえて出血と感染の制御などの最小限の内容にとどめ、その後の集中治療で全身状態を改善したのちに根治的手術を行う戦略です。
「外傷・Acute Care Surgeryセンター」は病院前診療(ドクターカー)から救急外来、手術室、集中治療室の一連の流れを一つのチームが継続して治療を担当することでシームレスかつ戦略的な治療が可能になります。
多発外傷、重症胸部外傷、重症腹部外傷、重症頭部外傷、心大血管損傷、多発骨折、ショックを合併する重篤な内因性緊急疾患(消化管穿孔、出血性疾患、虚血性疾患)、など
*救急集中治療科:遠藤 彰、荒木祐一(麻酔)、阿久津智洋、鈴木啓介、久下晶子(麻酔)、星 博勝、奥澤平明
*消化器外科:伊東浩次
*脳神経外科:山本信二
*整形外科:水野広一、白坂律郎、初鹿大祐
*血管外科:内山英俊
*放射線科:森 耕一